イノベーションのジレンマとは、1997年に、アメリカのクレイトン・クリステンセンが提唱したイノベーション分野における企業経営の理論の一つです。顧客のニーズを取り入れて新規機能の追加や、新技術による性能向上に注目することで、顧客の別の需要に目が届かず、シェアを確保しようとする経営判断が失敗を招くという現象を言います。

イノベーションには、従来の製品の改良を進める「持続的イノベーション」と、従来の製品の価値を破壊する事で全く新しい価値を生み出す「破壊的イノベーション」があります。イノベーションのジレンマは、先行企業の多くが破壊的イノベーションを軽視してしまうために発生する問題であり、主に優良企業が新興企業を前にして起こる現象です。

イノベーションのジレンマが起きるステップは以下の3つです。

1. 優良企業は、持続的イノベーションを重視し、これをプロセスとして自社の事業を成り立たせているため、破壊的イノベーションを軽視します。

2. 優良企業の持続的イノベーションの成果は、ある段階で顧客のニーズを超えてしまうため、それ以降顧客は別の需要を求めるようになり、破壊的イノベーションが力を持つようになります。

3. 次第に他社の破壊的イノベーションの価値が市場で広く認められるようになり、結果、それまで提供されてきた従来の商品の価値が下がってしまい、優良企業は地位を失ってしまいます。

破壊的イノベーションの前では、マーケティングにおいて最も基本となる顧客の意見や、顧客の求める価値の提供がマイナス要素になるという逆説は、今後の新たなマーケティングの課題と言えます。